こんにちは。若東龍キッチンの淵脇健一(元・琴吹雪)です。
先月から茨城県でも新型コロナ感染症の蔓延防止措置が解除されて、少しずつではありますが、私ども若東龍キッチンでもお客さまが戻り始めました。茨城産のおいしい旬の食材をご用意してお待ちしております。
前置きが長くなりました。
今回は「力士みそ」について書いていきたいと思います。
力士みそとは、昔から角界で食べられている、いわゆるおかず味噌です。にんにく、鶏ひき肉、出汁、みりんなどを材料に、味噌で練り上げてつくります。
この力士みそ。起源や考案者のことはわかりません。しかし、はっきりしていることは、たくさん食べて体を大きくするのが修行の一つである大相撲力士にとって、もっとも大切な食べものだということ。ごはんのおかずであり、ちゃんこ鍋の素になり、調味料やディップソースにもなるなど、ほぼ毎日、何らかのかたちで口にしていたものでした。
つくり方は部屋ごとに独自性があります。私が所属していた佐渡ヶ嶽部屋ではにんにくがゴロッと入っていましたが、若東龍キッチンの力士みそは、若東龍さんが所属していた松ヶ根部屋の力士みそのつくり方をベースに若東龍さんが独自に仕上げた味です。にんにくはもちろん入っていますがすり下ろしたもの、むしろ鶏ひき肉がゴロッとしています。
ようするに、力士にとって「部屋の味」なんです。早ければ15歳で入門する大相撲の世界。青春を過ごした味といっても過言ではありません。体を大きくするため、ごはんをかけこんで食べなきゃいけない時に、ふと箸を伸ばすのが力士みそなのです。ごはんのお供は旅のお供。地方開催の場所ではタッパーに入れて力士みそを持っていきました。
そんな力士みそがその効果を遺憾なく発揮するのが七月場所(名古屋場所)や夏巡業でした。名古屋場所は、番付発表の前日(初日の2週間前)に力士、行司ら協会関係者が現地入りするのが通例です。それから千春楽までの約1ヶ月、7月末には夏巡業があるため、約1ヶ月半の間、力士はいわゆる「出張」になるのです(ちなみに今年は2年ぶりに名古屋開催となり喜ばしいかぎりです)。
長期出張のご経験ある方ならわかると思いますが、滞在先の食事は初めものめずらしく「おいしいおいしい」と食べるんです。ところが疲れが溜まって食欲がなくなると、慣れない味付けに箸が進まなくなります。しかも名古屋の夏は暑い。午前中の稽古でヘトヘトになって食膳につくと、食べることも修行なんだと身を持って感じたものでした。
そこで力士みその登場となります。いつもの食べ慣れた味で、にんにくの強壮効果。見るのも嫌だった白米が不思議とぱくぱく食べられるんです。
「どうした? バテたか」
「ごっちゃんです。力士みそごっちゃんです(気にかけていただきありがとうございます。力士みそいただきます)」
このような会話がどこの部屋でもあったのではないでしょうか。
私どもが発売する力士みそ「ごっちゃんみそ」もまた、皆さんのちからの源になれたら。商品にはそんな願いが込められています。